痔核の治療法には、薬(軟膏や座薬)、注射止血療法、硬化療法、根治手術の4種類がある。
痔核の状況に応じて使い分ける。
各治療法の特徴
薬の治療(軟膏や座薬)
もっとも簡単に治療が行える。
治療効果はこれらの方法の中でもっとも弱い。
注射療法(パオスクレー)
痔核に注射する方法。
外来で簡単にできて止血効果が高いので、出血する痔核に用いられる。
止血効果は高いが、脱出を治す効果はほぼ無い。あくまでも出血する痔核に対する治療法。
硬化療法(ジオン)
痔核の「脱出」に対する治療に用いられる。
痔核に注射する方法なので、手術と比べると痛みが軽い。
短期入院や日帰りでも対応できる。
再発率が高い(1年後で15%くらい)
内痔核にしか使えない。内外痔核や外痔核には使えない。
痔核根治手術(けっさつ切除術)
ほとんど再発することなく、一発で治せる。
どんなタイプの痔核にも対応できる。
世界中の大腸肛門科で行われており、もっとも信頼のおける治療法のひとつ。
痔核を切る方法なので、多少の痛みを伴う。
数箇所切除する場合には、入院が必要となるケースが多い。
出血のリスクがある(1%くらい)
各治療法の位置づけ
薬の治療
軽症の痔核に対するもっとも簡単な治療法。
パオスクレー
出血する痔核に対し、外来で簡単に処置したい場合。
これでも出血が続く場合には、痔核根治手術やジオンを考慮する。
ジオン
痔核の「脱出」を治療するときに、再発する可能性があるのを納得した上で、どうしても切りたくない場合に用いる。
痔核根治手術
痔核の「脱出」を一発で完全に治したい場合。
解説
痔核の治療法は、上にあげたように色々な方法があります。
この中でパオスクレーは、あくまでも出血に対する治療法であり、脱出を治す効果はほとんどありません。
出血している痔核の場合、外来で簡単に行えるのでよく用いられています。
脱出する痔核の場合には、痔核根治手術と硬化療法(ジオン)という二つの方法があります。
これらの治療法は、痔核のタイプに応じて正しく使い分ける必要があります。
痔核根治手術は昔から行われており、肛門科では基本となる術式です。
痔核根治手術は、どんなタイプの痔核でも対応可能なオールマイティな方法です。
痔を切り取る方法なので、どうしても多少の痛みは起こりますが、技術の進歩により以前と比べると痛みはかなり改善されてきています。
痔核根治手術の短所としては、術後に起こる出血の問題があります。これは痔核の術後に1%くらいの頻度で起こります。
術者の技量により出血率はだいぶ違うのですが、どんな達人でも出血を0にすることはできていません。
ジオンは比較的歴史の浅い薬です。
痔核根治手術と比べるとどうしても再発しやすいので、「痔を治したいが、どうしても切りたくない」という人にお勧めすることが多いです。
表で示したように、ジオンは内痔核には有効なのですが、内外痔核や外痔核には向いた方法とは言えません。