痔瘻とは、肛門と皮膚の間にできる「トンネル」のことをいいます。

痔瘻は複雑度に応じて、I型~IV型のタイプに分けられます。

痔瘻は自然に治ることはないので、手術が必要です。痔瘻の手術には、①切開開放術、②括約筋温存術、③シートン法、の三種類があります。

肛門周囲膿瘍とは、肛門のまわりに膿がたまる状態です。切開して膿を出すと、その後痔瘻のトンネルができるので、後日痔瘻の根治手術が必要となります。

 

痔瘻について

痔瘻とは、肛門と皮膚の間にできる「トンネル」のことをいいます。

肛門にあるポケット(肛門陰窩:こうもんいんか)の中に細菌が入り込み、トンネルをつくるのが痔瘻の原因です。

また、ときに裂肛から細菌が侵入して痔瘻となることもあります(裂肛痔瘻)

痔瘻の症状には、「腫れ」「痛み」「膿が出る」などがあります。

痔瘻は薬では治らないので、治すには手術が必要です。

痔瘻を長年放置しておくと、だんだん複雑化して治療が難しくなったり、最悪の場合癌になることもあります。

 

肛門周囲膿瘍(のうよう)について

肛門周囲膿瘍とは、肛門のまわりに膿がたまる状態で、痔瘻の前段階の状態です。

この場合、即座に切開して膿を出す必要があります。

多くの場合、その後痔瘻のトンネルが完成してくるので、後日痔瘻の根治手術が必要となります。

 

痔瘻のタイプ

痔瘻は複雑度に応じて、I型~IV型のタイプに分けられます。

複数のタイプの痔瘻が合併していることもよくあります。

III型やIV型のような深くて複雑な痔瘻では、手術難度が高くなります。

 

痔瘻の手術

痔瘻は自然に治ることはないので、手術が必要です。

痔瘻の手術には、①切開開放術、②括約筋温存術、③シートン法、の三種類があります。痔瘻の状況に応じて使い分ける必要があります。

 

①切開開放術

切開開放術の手順は以下の通りです。

①②痔瘻のトンネル(瘻管:ろうかん)を電気メスで切開していく。

③切開を終えた状態。

④左右を縫合固定して終了。

この切開開放術は、単純確実でもっとも再発の少ない方法です。ただし「深くて複雑な痔瘻」にこれを行うと変形を生じる可能性があるため、「浅くて単純な痔瘻」に行われることが多くなります。

 

②括約筋温存術

括約筋温存術の手順は以下の通りです。

①②③瘻管を取り除く。

④瘻管の入り口を縫ってふさぐ。

この括約筋温存術は、切開開放術では変形リスクがある「深くて複雑な痔瘻」に行われます。上手く決まれば短時間でもっともきれいに治る方法なのですが、他の術式と比べて再発率がはるかに高いという短所があります。

 

③シートン法

シートン法の手順は以下の通りです。

①②③瘻管を取り除く。

④特殊なゴムを留置する。

⑤体が異物(ゴム)を押し出す反応が起こって、ゴムが浅くなってくる。

⑥ゴムが脱落したら痔瘻が治る。

このシートン法も、括約筋温存術と同様に、切開開放術では変形リスクがある「深くて複雑な痔瘻」に行われます。

再発率が低く、変形のリスクも低い方法なのですが、治るまでに時間がかかることがあります。

 

どの術式がいいの?

切開開放術は、最も確実で再発が少ない術式なので、「浅くて単純な痔瘻」(I型・浅いIIL型・IIH型など)に行われます。

いっぽう「深くて複雑な痔瘻」(深いIIL型・III型・IV型)に切開開放術を行うと、肛門変形が起こる可能性があるので、この場合には括約筋温存術またはシートン法が選択されます。

どの術式を選択するかは、病院や医師の方針で異なることがあるのですが、だれもが「一度の手術で変形なく治す」ことを目指しているのは同じです。

 

クローン病に合併する痔瘻

痔瘻の原因のひとつに、クローン病という腸の病気が関わっていることがあります。

通常の痔瘻と異なり、クローン病の痔瘻は、直腸にできた深い潰瘍(かいよう)が進展して痔瘻になっています。

このクローン病による痔瘻の場合、通常の痔瘻とは異なった治療戦略が必要となってきます。

痔瘻の手術の前に大腸内視鏡検査をお勧めする理由は、このクローン病の有無をチェックしておくためです。

 

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