肛門のまわりに膿がたまる病気。

即座に切開して膿を出す必要がある。薬では治らない。

 

人間の肛門には、もともと肛門陰窩(こうもんいんか)というポケットが8~12個ほど存在する。

 

中には深い肛門陰窩を持っている人がおり、ここから細菌が入りやすくなっている。

 

下痢などがきっかけになり、ここから細菌が入って膿がたまることがある。

これを肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう) といい、強い痛みや腫れが起こる。

 

肛門周囲膿瘍の場合、抗生物質を使用しても症状は改善しない。

即座に切開して膿を出さなければならない。

 

膿を出してしばらくしたら、多くの場合痔瘻のトンネルができてくる。

 

解説

肛門周囲膿瘍とは、字のごとく肛門の周囲に膿がたまる状態をいいます。

これは痔瘻の前段階の状態です。

下痢した後などに、急激に肛門の周りが痛くなって腫れてきた場合、この病気の可能性が高いです。

膿が深いところにある場合には、硬いしこりを触れることが多く、浅いところにある場合には、ブヨブヨした腫れを触れることもあります。

深いところに多量に膿がたまっている場合には、発熱することもあります。

肛門周囲膿瘍は、診断がつきしだい緊急で切開して膿を出す必要があります。

抗生物質を使用しても改善することはほとんどなく、かえって状態が悪化します。

浅いところにある膿であれば、局所麻酔で比較的簡単に膿を出すことができます。

いっぽう深い所に膿がたまっている場合には、腰椎麻酔でしっかり麻酔をきかせて膿を出す必要があります。

膿を出してしばらくしたら、多くの場合痔瘻になります。

痔瘻のトンネルができたら、こんどは痔瘻の根治手術を行う必要があります。放置していても治ることはありません。

 

(切開して膿を出すときの麻酔について)

浅い肛門周囲膿瘍で、肛門周囲の皮膚近くまで膿が来ている場合には、局所麻酔だけで切開して膿を出すことができます。

いっぽう深い肛門周囲膿瘍(III型とかIV型の膿瘍)では、局所麻酔だけで膿を出すのはとても痛いので、通常腰椎麻酔(下半身麻酔)が必要です。