痔瘻にはI型痔瘻~IV型痔瘻までいろいろなタイプがある。
痔瘻のタイプに応じて、適切な術式を選択する必要がある。
■I型(皮下痔瘻)
ごく浅い皮下の痔瘻。
I型痔瘻は裂肛に合併する場合がほとんどであり、これを「裂肛痔瘻」という。
■IIL型(低位筋間痔瘻)
筋肉の間を走行し、皮膚に向かうタイプの痔瘻。
全体の70%を占める。
■IIH型(高位筋間痔瘻)
筋肉の間を走行し、奥に向かうタイプの痔瘻。
全体の10%を占める。
■III型(坐骨直腸窩痔瘻:ざこつちょくちょうかじろう)
深くて複雑な痔瘻。全体の15%。
■IV型(骨盤直腸窩痔瘻:こつばんちょくちょうかじろう)
もっとも深く複雑な痔瘻。全体の2~3%。
■合併しているタイプ
複数の痔瘻が合併していることもよくある。
図はIIL+IIH型(低位筋間痔瘻+高位筋間痔瘻)を示す。
解説
痔瘻には単純で浅いものから、複雑で深いものまで色々なタイプがあります。
I型痔瘻や単純なIIL型の痔瘻は、切開開放術で一定の成績があげられるので、総合病院で手術が行われることもあります。
一方複雑なIIL型・IIH型・III型・IV型痔瘻などの手術は、肛門科を専門とする医師が手がけないと失敗する可能性が高くなります。
痔瘻の手術には、「やるべきこと」と「やってはいけないこと」という明らかな区別がありまして、これをふまえた確実な手術を行うには大腸肛門科の専門病院で相当の修練を積む必要があります。
これをわきまえない医師が手術を手がけてしまうと、「たれながし」の肛門をつくったり、再発を繰り返す恐れがあるのです。
(マニアックな蛇足・・・)
ここで示した痔瘻のタイプは、「隅越分類」といいまして、日本国内限定で独自に用いられているものです。
いっぽう世界的には「Parks分類」という痔瘻タイプ分類が広く用いられています。
だから国際学会で外国人相手に痔瘻の発表をするときに隅越分類に基づいて話をすると、隅越分類を知らない外国人は「?」となってしまいます・・・
(私も初めての国際学会でやらかしました)