分娩の際に膣と肛門の間が裂けて、きわめて薄くなる疾患。このとき肛門括約筋も同時に傷ついてしまう。
便やガスが漏れるようになり、性行為にも支障をきたす。
会陰裂傷は保存的治療では治らないので、手術が必要となる。
■原因
会陰裂傷は経膣分娩の際に膣と直腸の間が裂けて生じる。
会陰裂傷が起こった場合、通常分娩直後に産科医師が縫合を行うが、縫合がうまくいかなかった場合には会陰が裂けたまま傷が治ってしまい、便やガスが漏れるようになる(陳旧性会陰裂傷)
膣出口と肛門の間には、会陰という丈夫な組織がある(青矢印および青点線の領域)
この会陰の中には、肛門括約筋という肛門を締める筋肉が存在する。
出産時にこの会陰が裂けてしまうことがある。
これを会陰裂傷という。
重症の会陰裂傷では、肛門括約筋も同時に断裂してしまう。
通常は分娩直後に産科医が縫合を行うのだが、縫合がうまくいかなかった場合には会陰が薄い状態のまま傷が治ってしまう(青矢印)
この場合肛門括約筋も同時に断裂した状態で治ってしまうため、便やガスが漏れるようになり、性行為にも支障をきたす。
■治療
会陰裂傷は自然には治らないため、手術が必要となる。
手術は「会陰形成術」という方法で行う。
解説
会陰裂傷は、経膣分娩の際に膣出口と肛門の間が裂けて生じる疾患です。
この会陰裂傷が生じた場合には、通常分娩直後に産科医が縫合を行います。
多くの場合これだけで問題なく治ってしまうのですが、縫ったところがうまくつかなかった場合には、会陰が裂けたまま傷が治ってしまうことになります。
この会陰が裂けたまま治ってしまった状態のことを、陳旧性会陰裂傷(ちんきゅうせいえいんれっしょう)といいます。
このとき肛門括約筋(外括約筋および内括約筋)が損傷していると、便がガスが漏れるようになるため、患者さんは大腸肛門科を受診するわけです。
この陳旧性会陰裂傷を治すには手術が必要です。
真ん中から断裂して左右に引っ込んでいる肛門括約筋を探し出して、この肛門括約筋を真ん中で縫合します(括約筋形成術)
括約筋は「重ね合わせて縫合する方法」と「左右の端っこ同士を縫合する方法」があるのですが、研究の結果「重ね合わせて縫合する方法」(overlapping repair)の方が成績が良いことが分かってきたので、われわれの施設でもこの方法で行うようにしています。
会陰裂傷の状況によっては、上記の括約筋形成術に加えて、会陰の左右に平行に存在している「肛門挙筋」という筋肉を真ん中に寄せて縫合することで、さらに丈夫な会陰形成を図る場合もあります。これを前方挙筋形成術:anterior levatorplastyといいます(すこしマニアックな解説でした・・・)