排便障害とは
便が出にくい、強くいきんでも便がでない、残便感といった症状が起こる。
排便障害の原因となる疾患にはいろいろなものがある。原因の疾患に応じて適切な治療法を選択する必要がある。
下剤や浣腸を使うだけでは解決せず、かえって症状が悪化することもある。
排便障害の治療に取り組んでいる病院は、一部の大腸肛門科専門病院に限られている(大半の病院では、排便障害の専門的検査や手術は行っていない)
排便障害の種類
■直腸重積
腸管がはまりこんで、便が通過しにくくなる。
■直腸粘膜脱
直腸の粘膜がたるむことで便の通過を阻害する。
■直腸粘膜脱症候群
排便時に長時間いきむことによって、直腸の前壁に炎症が起こる。
■奇異性排便時収縮
排便時に直腸の角度がきつくなり、便が通過しにくくなる。
■直腸瘤
直腸の壁が弱くなって、一部が袋状になる。
便が袋の方向に向かってしまい、便が出にくくなる。
■肛門狭窄
肛門が狭くなり便が通過しにくくなる。
排便時痛みや出血を伴う。
■大腸癌・直腸癌
大腸癌や直腸癌が進行すると、便通を阻害して排便障害が起こる。
血便・腹痛・腹部不快感などを伴うこともある。
症状は徐々に悪化してくる。
■過敏性腸症候群
便秘や下痢を繰り返す。
腹痛を伴うことが多いが、通常腹痛は排便後に軽快する。
粘液が出ることもある。
排便障害の症状
「便が出口まで来てるのに出にくい」
「強くいきんでも便が出ない」
「残便感がある」 などの訴えがある。
排便障害の検査
排便障害の診断のために必ず行われるのが、排便造影検査と大腸内視鏡検査。
状況に応じて、肛門内圧検査・肛門超音波検査・シッツマーク検査などを行うこともある。
(1)排便造影検査
肛門からバリウムを少量入れて、排便するようにいきむところを撮影する。
排便障害を起こす疾患があれば、疾患に応じて特徴的な所見が得られる。
(2)大腸内視鏡検査
排便障害の症状は、直腸がんとまぎらわしいことも多い。
排便障害がある場合には、大腸内視鏡検査を必ず行っている。
排便障害の治療
直腸重積
直腸重積は、排便障害の一種。
排便時にいきむと、腸壁が折りたたまれて肛門側に入り込んで出口をふさいだような形になり、便の通過がさまたげられることで排便障害が起こる。
「便がひっかかる」「いきんでも便が出ない」などの症状が起こる。
診断には排便造影検査が有効。
バリウムを直腸に入れていきませると、腸管壁がたるんで通過障害を起こしているのが確認される。
直腸がんでも似たような症状が起こるので、大腸内視鏡検査も必ず受けておく必要がある。
直腸瘤など、他の排便障害をきたす疾患を合併していることもある。
(治療)
原則として、別項で記した排便障害の治療(生活習慣の改善および薬)で対処を行う。
上記の治療で改善しない場合には手術を考慮する。
直腸粘膜脱
直腸の粘膜がたるんで、脱出してくる状態を直腸粘膜脱という。
不完全直腸脱と呼ぶこともある。
治療はゴム輪けっさつ療法(マックギブニー法)や・・・
硬化療法(ジオン)で対処することが多い。
全周が脱出するタイプのものは、PPHという器械を用いて治療することもある。
痔核のように丸く脱出してくる場合には、痔核に準じてけっさつ切除術を行うこともある。
直腸粘膜脱症候群
直腸粘膜脱症候群は、排便障害の一種。
直腸の前壁(おなか側)に炎症が起こる。
潰瘍のように見えたり、痔核のように脱出することもある。
(どんな病気か)
排便時に長時間いきむことによって、直腸の粘膜が刺激を受けて炎症が起こる。
潰瘍のように見えたり、痔核のように脱出してきたりと色々なタイプがある。
(症状)
残便感や頻便感が起こる。
出血したり粘膜が脱出することもある。
(診断)
大腸内視鏡検査で診断をつける。
直腸癌と間違われることがあるが、組織を顕微鏡でしらべると区別がつく。
(治療)
直腸粘膜脱症候群の治療は、薬や生活習慣の改善といった保存的療法が基本となる。
排便時に長時間いきむのをやめることがもっとも重要。
緩下剤の内服でスムーズな排便を心掛ける。
奇異性排便時収縮
通常排便の時には、直腸~肛門がまっすぐに近くなることで便が直腸からスムーズに排出される。
奇異性排便時収縮の場合には、排便時に肛門挙筋によって直腸が前方に圧迫されてしまう。
通常の排便とは逆に、直腸の角度がきつくなって便が通過しにくくなる。
(症状)
「いくら強くいきんでも便がでない」と訴えるケースが多い。
(診断)
排便造影検査で診断をつける。
バリウムを直腸に入れていきませると、正常の排便とは逆に直腸~肛門の角度がきつくなって排便が障害される。
(治療)
保存的治療(便通のコントロール)を行う。決定的な治療法は確立されていない。