肛門周囲の「かゆみ」について解説。
粘液接触・真菌(カビ)・薬・石鹸など、いろいろなものが原因となりうる。
■粘液接触によるかゆみ(最も多いタイプ)
腸から分泌された粘液が肛門周囲に付着して、かぶれが起こる。
さらに以下のような要因が加わって、かぶれが強くなる。
①石鹸・洗剤・下着などの接触
②「掻きすぎ」や「紙でのこすりすぎ」
付着した粘液を洗い落とすのが重要。
排便後は濡らしたペーパーで拭くか、ウォシュレットなどで洗浄してペーパーで軽く水気をふきとる(紙でゴシゴシこするとかえってかゆくなる)。
排便後は紙で拭くだけではだめ。粘液が肛門周囲によけいに広がるので、かぶれは改善しない。
肛門周囲に石鹸やボディシャンプーをつけない。肛門周囲はお湯洗いのみ。
コーヒー・酒・刺激物・乳製品などが原因となっていることもあるので、過剰な摂取をひかえる。
はじめはステロイド入りの軟膏を使用し、徐々に弱いものに替えていくことが多い。
■真菌(カビ)によるかゆみ
大腸の粘液が付着して湿った環境となったところに、カンジダというカビの一種が繁殖してかゆみが起こる。
上記の注意事項を守りつつ、カビを殺すクリームを使用する。
ステロイド軟膏では一時的に良くなったように見えても、また再発する。
「粘液分泌+カビによるかぶれ」か「粘液分泌+接触によるかぶれ」かを正確に見極めてから治療を始める必要がある。
補助的にカビの培養検査を行うことがあるが、ほとんどの場合見ただけで区別することができる。
■その他の原因
ぎょう虫などの寄生虫(小児にときどき見られる)
全身疾患に伴うかゆみ(糖尿病や肝疾患のときに起こることがある)
肛門疾患によるかゆみ(痔ろうや痔核などによる粘液付着によるもの)
食物によるかゆみ(コーヒー、酒、香辛料、乳製品などが原因となっていることがある)
悪性腫瘍によるかゆみ(パジェット病やボウエン病など)
解説
「肛門がかゆい」といって肛門科を受診される方は非常に多いのですが、その原因にはいろいろなものがあります。
原因としてもっとも頻度が高いのは、腸から分泌された粘液が肛門周囲に付着することによって生じる「かぶれ」です。
多くの人は「洗い方が足りないからかゆいのだろう」と考えて、セッケンをたくさんつけて熱心に洗うのですが、これは逆効果になることが多いです。
「処方された塗り薬をつける」「紙でゴシゴシこすらず、石鹸もつけない」「排便後に粘液を洗い落とす」
たいていの場合、この3点セットで症状が改善してきます。
また、潰瘍性大腸炎や直腸炎などの腸の炎症が起こっている場合には、これが原因で粘液分泌が増えている可能性もあります。
この場合大腸内視鏡検査で正しい診断をつけておく必要があります。
真菌(カビ)が原因のかぶれは、それほど頻度は高くありません。
カビがいるかどうかを調べるために培養検査を行うのですが、この検査では実際よりかなり高頻度にカビが検出される印象があります。
この検査では、「カビによって引き起こされたかぶれ」か、「接触によるかぶれなのに、たまたまそこにいたカビが検出された」のか区別がつかないことが多いのです。
そのため、カビによるかぶれかどうかはあくまでも見た目で診断をつけるのが基本であり、培養検査はあくまでも補助的なものと考えています。