陰部神経の知覚異常や肛門挙筋の異常な緊張で痛みが起こる。
決定的な治療法は確立されておらず、治療にてこずることも多い。
■原因
肛門を支配する神経(陰部神経)の知覚異常や、肛門周囲の筋肉(肛門挙筋)の異常な緊張が原因となり、痛みが起こると考えられている。
■症状
症状は人によってさまざま。
長時間座ると痛くなる、肛門に鈍痛がある、夜間に突然肛門が痛くなる・・・など
■診断
肛門挙筋や陰部神経を圧迫すると、痛みを訴えることが多い
痔ろうや裂肛と症状が似ていて、間違われることもある。
■治療
刺激性の下剤を飲んでいる場合、症状が悪化しやすいので中止したほうがよい。
過敏性腸症候群を伴うことが多いので、便通異常を伴う場合には同時に治療が必要。
腰椎の疾患(ヘルニア)が原因となっていることもある。腰痛を伴う場合には整形外科を受診した方がよい。
温めると楽になることが多い。いつもシャワーだけの人は、入浴した方がよい。
適度な運動も症状を改善することがわかっている。
直腸肛門痛では、鎮痛剤や痔の軟膏はあまり効果がない。
この場合以下の薬を組み合わせた治療法が有効となる。
①筋肉のけいれんをとる漢方薬
②うつ病の薬
③てんかんの薬
内服薬で改善しない場合、神経ブロック注射が有効なこともある。
重症で以上の治療が無効の場合、ペインクリニックでの治療が必要となるケースもある。
解説
この「直腸肛門痛」は、診断に苦労することがある病気です。
他の病院を受診して、「原因ははっきりしないけど、痔核や裂肛があったのだろう」との診断で、軟膏や座薬を処方されるのですが、症状が改善しないので肛門科の専門病院を受診される方が多いです。
逆に直腸肛門痛の診断で治療されていても良くならず、実は痔ろうが隠れていたというケースにも時に遭遇します。
直腸肛門痛の治療は痔核や裂肛とはかなり異なるので、はじめに正しい診断をつけることが大事です。
また、この病気は治療してもなかなか改善しない人が多く、どこの肛門科専門病院でも治療に苦労させられているのが現状です。
はっきりした診断がつかず、治療してもなかなか改善しないので、この病気で受診された患者さんの満足度は低いことが普通です。
患者さんは治療に満足しないので、あちこちの肛門科を回ることになるわけです。
色々薬を変えても症状が改善しない場合には、痛みの専門家であるペインクリニックを受診するようお勧めすることもあります。