直腸が膣壁へ膨れてくる疾患で、中高年女性に多く見られる。
軽症であれば、便通コントロールや生活習慣改善で対処する。
それで改善が認められない場合には手術を考慮する。
直腸瘤とは
直腸瘤(ちょくちょうりゅう)は、膣と直腸の間の壁が弱くなって、直腸壁がポケット状に膨らんでくる状態のことをいいます。
直腸瘤の症状は大きく分けて二つあります。
「便が出にくい・残便感がある」といった排便の異常と、「膣壁がふくれてくる・脱出してくる」という膣壁の異常です。
直腸瘤の治療
直腸瘤の治療には、保存的治療と手術の二つがあります。
保存的治療とは、便通のコントロールを行って、直腸瘤とずっと付き合っていく治療法です。
軽度の直腸瘤であれば、これで様子を見ていくことも可能です。
いっぽう保存的治療で改善しない場合や、重度の直腸瘤の場合には、手術を考慮します。
手術には「肛門側から行う手術(経肛門手術)」と「膣側から行う手術(経膣手術)」があります。
「排便の異常」が主な訴えの場合には、経肛門手術を行うことが多く、「膣壁の異常」が主な訴えの場合には、経腟手術を行うことが多くなります。
どちらの術式にも長所と短所があるため、「主訴」「年齢」「重症度」「合併疾患(直腸粘膜脱・直腸重積・痔核・裂肛など)」といった要素も考慮に入れながら、治療法を選択することになります。
保存的治療
保存的治療は、「内服薬による治療」および「生活習慣の改善」の二本立てで行います。
緩下剤を処方し、食物繊維を多目に摂取してもらいます。
排便時には強くいきまないように注意します。
この保存的治療で直腸瘤が治ることはなく、「直腸瘤とずっと付き合っていく」方法となります。
経肛門手術
肛門側から膣壁を縫ってゆき、直腸と膣の間の壁を補強していく。
直腸瘤のポケットが修復され、縫合した場所が「ついたて」のようになる。
経腟手術①:後膣壁形成術
膣壁を切開してはがしていく(剥離:はくり)
膣壁の下にある筋肉(肛門挙筋)を縫い合わせて壁を作る。
膣壁を縫合して終了。
経腟手術②:メッシュを用いる手術(TVM手術)
膣壁を切開して剥離し、図のような形状の小型医療用シート(メッシュ)を留置する。
メッシュの腕のところを靭帯に通し、ハンモックのようにつり上げる。
膣壁を縫合して終了。
メッシュが膣壁と直腸壁の間に留置され、丈夫な「ついたて」ができる。
後膣壁形成術で対応できない重度の直腸瘤であっても、確実に治すことができる。