潰瘍性大腸炎・直腸炎

血液が混じることもある。

下痢を伴うことが多い。

 

過敏性腸症候群

便秘や下痢を繰り返す。

腹痛を伴うことが多いが、通常腹痛は排便後に軽快する

 

大腸癌・直腸癌

血液が混じることもある。

便秘や腹痛、腹部不快感を伴うことがある。

症状は徐々に悪化する。

 

痔核

排便時に肛門から脱出するものがある。

出血することもある。

 

裂肛

排便時に痛みを伴う。

出血することもある。

 

痔瘻

膿が出つづけている。

皮膚の下にしこりを触れる。

肛門括約筋不全

便がもれる。粘液がもれる。下着が汚れるなど。

 

解説

ここでは肛門から粘液・膿が出る病気を示します。

粘液を膿と表現したり、その逆の表現をされる方も多いので、分かりやすくするためにここでは粘液と膿を同じ項目で扱っています。

 

「肛門から粘液が出る」との訴えで大腸肛門科を受診する方は、比較的よくいらっしゃいます。

この場合、「本当に粘液が出ている」のか、もしくは「本人がそう思い込んでいる」だけなのかを判別する必要があります。

神経質な人の場合、「肛門から粘液が出て臭いがする」といって受診する方がいるのですが、実際診察しても異常がないというケースも時に経験します。

この場合、肛門科で治療するだけでは限界があることも多く、心療内科などと連携して治療が必要となることもあります。

 

これらの訴えは、肛門を診察して、必要に応じて大腸内視鏡検査を行うことで正しい診断をつけることができます。

粘液が出るという訴えにも、いろいろな原因が考えられます。

肛門の病気として多いものが、痔核(内痔核・内外痔核)および直腸粘膜脱によるものです。

痔核が脱出することによって、奥の粘膜が脱出して下着が汚れると訴えるわけです。

ただし痔核などの場合には、ほとんどの方が最初に「脱出する」ことを訴えます。

裂肛も一応ここに記載していますが、粘液というより出血の訴えが大半です。

「膿が出る」という訴えの場合、たいてい痔ろうが原因となります。ただし粘液を膿と表現する方も多いので注意が必要です。

また、肛門括約筋不全でしまりが悪くなっている場合には、「下着が汚れたり便がもれる」という訴えが前面にくることが多いです。

肛門にあきらかな異常を認めなかった場合には、大腸内視鏡検査で大腸を調べる必要があります。

潰瘍性大腸炎や直腸炎といった大腸の炎症の場合、血液混じりの粘液が出ることが多いです。ただ出血には気づかず粘液だけが訴えの原因となっていることもよくあります。

また、大腸がんや直腸がんといった悪性の疾患も考慮しなければなりません。

若い人で腹痛や排便異常も伴っている場合には、過敏性腸症候群の可能性も考えておかなければなりません。