深くて複雑なタイプの痔瘻。

変形させることなく、なるべく一発で治す必要があるので、手術難度はI型II型痔瘻より高くなる。

 

ここでは当院でもっとも多く行われているシートン法について解説する。

原発口(A)から膿が入り、肛門の後方(尾てい骨の近く)に膿のたまるスペースをつくる。これを原発巣と呼ぶ(B)

そこからさらにトンネルが伸びていき、横の方に膿の出口をつくることもよくある(二次口)

 

原発巣の真上から掘り進んで、原発巣のスペースを露出する。

中の膿のたまりをきれいに掃除する。

左右側方の瘻管(痔瘻のトンネル)も同時に掃除する。

 

「原発巣を処理した場所」と「原発口」の間に特殊なゴム輪をかける。

このやり方をシートン法と呼ぶ。

 

左右側方の掃除した瘻管にも、膿がたまらないようにチューブ(緑色)を留置しておくことが多い。

 

原発巣が適切に処理されていれば、奥の方から肉が盛り上がって治り始める。

 

さらに肉が盛り上がって、創が徐々に治ってくる。

側方のチューブは術後しばらくしてから抜けば、そのままふさがっていく。

ゴム輪は徐々に浅くなってくるので、ゆるんできたら医師がしめなおす。

 

さらに治癒過程が進んで、ゴム輪も浅くなってきたところ。

原発巣と左右側方の瘻管はほとんどふさがった。

 

最終的にゴム輪が脱落して治癒する。

この方法であれば変形もほとんど起こらず、再発率も低い。

 

解説

III型痔瘻は、深くて複雑な痔瘻です。

頻度としては痔瘻全体の15%程度で、それほど多いものではありません。

ただし私が所属しているような大腸肛門科の専門病院の場合には、複雑痔瘻の患者さんが他の病院から紹介されてくることが多いので、III型痔瘻の割合はこれより高くなっているようです。

III型痔瘻は深い位置にあり、痔瘻の瘻管も複雑に枝分かれしていることが多いので、II型痔瘻の手術と比べると難易度が高い手術です。

私自身、このIII型痔瘻とIV型痔瘻の手術を術者として300例ほど経験してきましたが、やはりII型痔瘻と比べるとなかなか一筋縄ではいきません。

経験が浅い頃には再発率も10%近くあり、成績がなかなか安定しませんでした。

近年では技術レベルの向上に伴い再発率はかなり低くなってきており、近年の再発率は3%程度と、以前に比べて著明に改善されてきています。